サッカーは最初から11人だった?

サッカーは最初から11人だった?

サッカーは、11人対11人で戦うスポーツ。


試合時間は90分。

フィールドプレーヤーは、原則として手でボールを扱えない。 など。

サッカーを知っている人なら、どれも当たり前のことかもしれません。


でも、少し考えてみると不思議です。

なぜ、サッカーは11人なのでしょうか。


10人でも、12人でもなく、11人。

サッカーが生まれたときから、そう決まっていたのでしょうか。

今回は、現在では当たり前になっている「11人」という数字から、サッカーが今の姿になるまでを少し遡ってみます。


 


 

そもそも、同じルールでサッカーをしていなかった


現在のサッカーにつながる大きな転換点の一つが、1863年です。

この年、イングランドでFootball Association(FA)が設立され、統一されたルールが作られていきます。

では、それ以前はどうしていたのでしょう。

実は、それぞれの学校や地域などで、異なるルールのフットボールが行われていました。

ある場所では認められているプレーが、別の場所では認められない。

同じ「フットボール」と呼ばれていても、ルールが違っていたのです。

そこで、異なるチーム同士でも同じルールで試合ができるようにしようと、ルールの統一が進められていきました。

そして1863年、FAによる最初期のルールが誕生します。

ところが、そのルールを現在のサッカーと比べてみると、意外なことに気づきます。


 


 

「11人」とは書かれていなかった


現在のサッカーでは、1チーム11人で試合をします。

ところが、1863年に作られた最初期のFAルールには、チームの人数についての規定がありませんでした。

つまり、

「サッカーは11人でやるもの」

という、現在では基本中の基本と思えるルールが、最初から決められていたわけではなかったのです。

当時は学校などによって人数が異なり、異なるチームが試合をするときには人数を調整することもあったといいます。

人数はまだ固定されていませんでした。

実際、FAの新しいルールを試すために1864年1月に行われた試合では、14人対14人でプレーされています。 


なぜ、その後「11人」がサッカーの標準になったのでしょうか。

その理由を一つに特定することは難しいようです。

ただし、11人制そのものは次第に広がっていきました。

1872年に行われた世界初の公式国際試合、イングランド対スコットランドも11人対11人でした。

そして1897年、競技規則に初めて「1チーム11人」と明記されます。

つまり、1897年に突然11人制が生まれたのではなく、すでに広がっていた11人制が、後から正式なルールとして明文化されたと考える方がよさそうです。


 


 

11人だけではなかった。「当たり前」はまだまだ違う


初期のルールを見ていくと、人数以外にも現在とは違うところが見つかります。

例えば、手を使うこと。

現在なら、フィールドプレーヤーがボールを手で扱えばハンドです。

ところが初期のルールには、飛んできたボールを直接キャッチする「フェアキャッチ」という考え方がありました。

現在のサッカーよりも、ラグビーを思わせる部分が残っていたのです。

ただし、キャッチしたボールをそのまま持って走ることはできませんでした。 

ゴールキーパーのルールも現在とは違いました。
ゴールキーパーが特別な存在としてルールに登場するのは1871年です。

この年のルールで、ゴールキーパーには「ゴールを守るため」に手を使うことが認められました。


 


 

90分でもなかった?


もう一つ、現在のサッカーで当たり前なのが、

「試合時間は90分」

というルールです。

ところが、これも最初から決められていたわけではありません。

1863年の最初期のFAルールには、試合時間についての規定がなかったとされています。

90分という時間も徐々に定着し、1897年の競技規則では、双方が別の合意をしない限り「90分」と明記されました。 


 


 

サッカーは、少しずつ「サッカー」になった


こうして見てみると、不思議です。

 11人。

  90分。

 手を使わない。

 ゴールキーパー。
 

現在では、どれもサッカーをサッカーたらしめる、ごく基本的なルールに思えます。

でも、その多くは最初から揃っていたわけではありません。

異なるルールでボールを追いかけていた人たちがいて、違うチームと試合をするためにルールを合わせる。

実際にプレーしてみて、不都合があれば変える。

そうした積み重ねの先に、現在のサッカーがあります。

つまり、ある日突然、誰かが現在のサッカーを発明したというよりも、


人々が試合を重ねながら、少しずつ「サッカー」をつくっていった。 


そんな見方もできるのかもしれません。


 


 

当たり前を、少しだけ遡ってみる


毎週のように世界中で行われているサッカー。

私たちは何気なく、

「サッカーは11人でやるもの」

と思っています。

けれど、その当たり前を150年以上遡ってみると、そこには今とは違うサッカーがありました。

普段、当たり前だと思っているものにも、

「なぜ、こうなったんだろう?」

と問いを立ててみる。

すると、いつも見ているものの向こうに、知らなかった世界が見えてくることがあります。

次にサッカーを見るとき、ピッチに並ぶ11人が、ほんの少し違って見えるかもしれません。


【参考】

National Football Museum — The Laws of the Game, 1863

Sporting Life, 6 January 1864

The FA — England v Scotland: The first ever international

Laws of the Game (1871)

Laws of the Game (1897)

山本浩『フットボールの世界史』

 

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